歴代最多の甲子園優勝回数!名門野球部マネージャーが“高倍率”の憧れ職業で活躍できる理由【Baseball Goddess Story vol.2】
Baseball Goddess Story / Episode.2
出身高校:中京大学附属中京高校
2023年の夏の甲子園も105回目を迎える高校野球だが、歴史上で最も優勝している高校をご存知だろうか。プロ野球選手の出身高校としても歴代3位(2023年現在)の出身者数を誇る「中京大学附属中京高校」は、春4回、夏7回の合計11回の優勝を誇る超名門野球部。そんな野球エリート集団の甲子園出場を支え、現在は超高倍率の職業「アナウンサー」として活躍している元マネージャーをご紹介。野球部マネージャー時代の活動やアナウンサーのお仕事など、活躍の全貌を紐解いていく。
中嶋絵美(Emi Nakashima)
野球部マネージャーになったきっかけを教えてください。
中嶋さん(以下:中嶋。敬称略):中学2年生の夏休みに母から高校野球“甲子園”の存在を教えられ、テレビ中継を見たのが高校野球との出会いでした。その時に地元の愛知県代表で出場していたのが、後に進学する中京大中京高校でした。熱く白球を追う球児の姿に胸を打たれると同時に、ベンチに女子生徒の姿を発見し「私もこの場所に行く」と瞬間的に決めました。そして、中京大中京の野球部マネージャーとして甲子園のベンチに座る夢を叶えるため、入学後すぐに野球部の見学に行きました。
どんなマネージャー業務をやっていましたか?
中嶋:掃除、洗濯、ドリンクの準備、弁当手配、必要備品の買い出し、来客対応、アイシング作り、遠征準備、バットのグリップ巻き、試合時のスコア記入やノックのボール渡しなど、“プレー以外の全て”と言っても過言ではないかもしれません。たくさんありすぎて挙げきれません(笑)
マネージャー時代に辛かったこと、嬉しかったことはどんなことですか?
中嶋:辛かったことはないです。選手よりも指導者の近くにいる時間が長く、自然と橋渡し役も担っていたのだと思うのですが、そこに難しさは感じました。同じ生徒側として、選手たちの気持ちもよく分かるし、監督コーチの会話を近くで聞いている分、指導者の想いも分かる。ちょっとした不満や疑問が生じたときに、もっと上手く双方をケアできていたらよかったなと、今でも後悔していることはあります。
嬉しかったことは山ほどあります。毎年バレンタインには選手全員に“愛の義理チョコ”を手作りして配っていたのですが、ホワイトデーの日、選手に囲まれて大きなホールケーキと共に「絶対に甲子園に連れて行きます」という言葉をプレゼントしてもらい、感動しました。
中嶋さんにとって甲子園はどんな場所ですか?
中嶋:夢が叶った場所であり、夢破れた場所でもあります。「甲子園のベンチに座る」という当初の自分の夢を叶えることはできましたが、チームの目標は「日本一」。準々決勝でサヨナラ負けし、頂点に立つことはできませんでした。開幕前の甲子園練習で初めてグラウンド内に入った時、あまりの迫力に鳥肌が立ったことを覚えています。
社会に出てから野球部マネージャーを経験していて良かったと実感することはありますか?
中嶋:マネージャー時代は対戦チームの指導者の方や、スポーツ用品メーカー・販売店のみなさん、卒業生のプロ野球選手の方など、大人同士の会話を早くから近くで聞くことができたので、それがある種の社会勉強になっていたかなと思います。その中で、目配りや気配りが自然と身に付き、“常に先を予測して動く、先回りして行動する”ことができるようになり、すぐに社会に出ても通用するような人間に育てていただきました。あとは…ちょっとやそっとのことでは動じない根性を手に入れました!
中京大中京高校 野球部マネージャーの伝統があれば教えてください。
中嶋:試合開始前にベンチ入り選手が集まって、当日のスタメンをマネージャーが大声で発表し、それに選手も大声で返事をするという儀式のようなものがありました。噛まないように滑舌良く最後まで言い切れるか毎度緊張しましたが、“自分もこのチームの一員としてこの場所にいるんだ”と実感できる、とても好きな時間でした。
中嶋さんにとって野球部マネージャーはどんな役割だと思いますか?
中嶋:マネージャーだからこそ目を向け、気が付けることがあって、指導者と選手が気持ちよく、不自由なく野球ができる環境を整える役割があると思います。チームの空気を良くする、いい雰囲気作りをする、小さなストレスを排除してあげる…それらが勝利に繋がっているのであれば、それは立派な戦力です。だからこそ、選手が技術を磨くのと同じように、マネージャーも日々レベルアップしていかなければならないと思います。
社会に出てからスポーツに関わるお仕事をたくさんされてきたと思いますが、印象に残っているお仕事はありますか?
中嶋:福島県のテレビ局に勤めていたとき、県最大のスポーツイベント・市町村対抗「ふくしま駅伝」で中継所実況を担当していました。年に一度、役職や部署に関係なく、社員総出で生中継をするのですが、アナウンサーもスタッフも本当に事前準備が大変で…。放送が終わると社内で自然と沸き起こる拍手。達成感と一体感には毎回感動しました。スポーツ中継を通して、伝え手の私たちにも物凄いチームワークが生まれる。スポーツの力って本当にすごいです。
アナウンサーになるにはどんな素質や努力が必要ですか?
中嶋:マネージャーとアナウンサーって似ていると思うんです。アナウンサーは画面に出て話すけれど、主役はあくまで取材対象。誰かの頑張りを伝えて輝かせるサポートができたり、一緒に番組に出演するタレントさんのサポート役となったり。サポート力と、空気を読んで臨機応変に対応できる力は求められる思います。
学生時代にアナウンススクールに通って基礎を学ぶ人は多いですが、アナウンサーは特に必須の資格もスキルもありません。主役ではありませんが自己アピールもある程度は必要なので、自分の好きなこと、興味のあることにとことん打ち込んで、将来取材したいことを見つけたり、自己PRに繋がる何かを見つけたりすると良いと思います。
これからの人生の目標があれば教えてください。
中嶋:漠然としているのですが、アスリートのセカンドキャリアにとても興味があり、取材し、発信できる場所があればいいなと思っています。話し伝えることはもちろんですが、以前から興味のあった“書く”ことにもチャレンジしてみたいです。あとは、今年のWBCを見て、海外の球場で野球を観たい欲が高まったので、英語を今一度勉強して、メジャーリーグ観戦をしたいです。
甲子園を目指している球児に応援コメントをお願いします
中嶋:甲子園行きの切符は数に限りがあり、“努力は必ず報われる”とは言えないのが現実です。でも、甲子園を目指すその想いを報いるためには、やはり努力をするしかありません。悔しい、苦しい、そんな日々も、必ずみなさんの宝物になります!仲間と同じ目標に向かって切磋琢磨していってください。また、マネージャーのみなさんも“自分は戦力だ”と堂々と胸を張り、やさしく、たくましく、泥臭く、チームを勝利に導いてください!
社会で頑張る元甲子園球児たちに応援コメントをお願いします
中嶋:乗り越えた厳しい練習、築いたチームワーク、失敗を恐れず挑戦する姿勢、甲子園までの道のりの中で学んだことは、みなさんの社会人としての基礎になっているのではないでしょうか?この先、壁にぶつかることがあっても、あの3年間を思い出して、夢舞台に立った誇りを胸に、共に頑張っていきましょう!
当サイトでは甲子園に出場経験のある元甲子園球児のコーチ登録(無料)をお待ちしています。培ってきた野球技術や知識を社会に還元したい元甲子園球児は、申請ページよりコーチ登録のご申請をお願い致します。
歴代最多優勝を誇る名門野球部のマネージャーとして甲子園出場をサポートし、現在はアナウンサーとしてたくさんの情報を人々に届けている中嶋さん。インタビューを通じてわかったのは、マネージャー時代から関わる人たちの状況をそれぞれ把握し、目配り・気配り・心配りを実践してきたからこそ、アナウンサーとして多くの人々に伝わりやすい情報を届けられているということ。今後の中嶋絵美さんの活躍に要注目です!
Photo:Naoki Muramatsu
Edit:ミスター甲子園